双塔を望む小径に700本余のシャクナゲが咲く
境内の表側からでは全く分からないが、書院の奥に山裾を利用した素晴らしい庭園がある。飛び石を巡らせた心字池を中心に、丸形や段刈り込みのサツキ、樹木を斜面にまで植えて山の自然との景観を整えている。庭越しには平安時代初期建立の三重塔、西塔(国宝)が間近に見え、そのたおやかな姿が庭全体を引き締める。そもそもこの庭園は、西塔を借景として設計されたもので、造られたのは江戸時代初期である。
一段高い所に、庭園を取り巻く小径がある。モミジの古木が幾重にも枝を伸ばし、水琴窟(すいきんくつ)の妙なる音色が響く静謐な道だ。そのみはらし台からは西塔はもちろん、奈良時代建造の東塔(国宝)も見える。近世以前建立の双塔が残る日本唯一の遺構を、モミジの枝越しに眺める。
「寺の外からでは、この絶景は想像できないでしょう。参拝客は自分だけの“隠れ寺”とおっしゃってくれます」と住職の山下真弘さん。
4月中旬から5月中旬、萌えるような若葉色のモミジの下には、シャクナゲの花が無数に咲き連なる。白や薄紅、紅色……その数は700本から800本ほど。山の神に捧げられ、また祭りの時には山の神から授かるというように宗教的行事に関わるシャクナゲ。つつましげながら、昼なお暗い小径に花明かりを灯すように約1ヵ月間、咲き継いでいる。
色鮮やかなボタンと紅葉も見もの
4月下旬から5月上旬、境内は和傘が差しかけられた約1000株のボタンの花で埋まり、壮麗を極める。同時期、シバザクラやハンカチの木も美を競う。5月下旬から6月上旬は庭園のサツキが一面花色に染まり、花暦は梅雨の花、アジサイにたすきを渡す。
秋の楽しみは、数多いモミジの紅葉だ。特に樹齢約300年の3本のオオモミジは、緑から赤や黄色などに色を変え、輝くような錦繍で庭園を包み込む。
當麻寺の裏鬼門を千年余り守り続ける
西南院は古刹・當麻寺の塔頭の一つである。飛鳥時代、當麻寺が創建された際、裏鬼門の守り寺院として建立された。弘仁14年(823)に弘法大師が西南院に留錫し、曼荼羅堂で「いろは歌」を想念。この時から真言宗となって法灯は守り続けられている。
本尊は端正な目鼻立ちの十一面観音菩薩で、聖観音菩薩、千手観音菩薩と共に重要文化財に指定されている。
ギャラリー
第21番 當麻寺西南院(たいまでらさいないん)
住 所
電 話
U R L
宗 派
ご 本 尊
拝 観
料 金
交 通
隣接霊場
奈良県葛城市當麻1263
0745-48-2202
http://taimadera-sainain.or.jp/
高野山真言宗
十一面観音菩薩
9~17時(受付16時30分まで)
300円
電車=近鉄南大阪線当麻寺駅から徒歩15分またはJR和歌山線香芝駅からタクシー10分
車=西名阪道柏原・香芝ICから5㎞または南阪奈道葛城ICから約2㎞、P50台(民営・市営駐車場)
車で石光寺3分、船宿寺30分、長岳寺40分
花ごよみ
シバザクラ
シャクナゲ
ボタン
ハンカチの木
ナンジャモンジャ
サツキ
アジサイ
紅葉
センリョウ
ロウバイ
4月中旬
4月中旬~5月中旬
4月中旬~5月上旬
4月下旬〜5月上旬
5月上旬
5月下旬~6月上旬
6月上旬~中旬
11月下旬
12月上旬~下旬
12月下旬~1月上旬
主な行事
大般若経転読法会
4月第1日曜
周辺の見所
傘堂 体を柱の周囲に触れさせて祈願する、庶民信仰のシンボル。方柱の上に宝形の屋根をのせ、傘の形に見えるのでこの名がある。県指定の有形民俗文化財。徒歩10分。
竹内街道 竹内街道は堺市大小路と當麻長尾神社を 結ぶ、全長26㎞の日本最初の国道とされる。近鉄当麻寺駅より一駅隣の磐城駅から道に沿って30分ほど歩くと、伝統的な白壁が美しい大和棟の民家の続く竹 内集落が現われる。途中には芭蕉が當麻で足を止めて詠んだという『野ざらし紀行』の句「綿弓や琵琶に慰む竹のおく」が刻まれた綿弓塚も立ち、俳句愛好者に よく知られている。作家司馬遼太郎は幼少期をこの地ですごした。車で5分。
高雄寺 役行者が建立したと伝えられる閑静な寺。耳の病や乳の出ない母親にご利益があるという。拝観は前日までに要予約。無料。徒歩20分。
當麻蹴速塚 相撲の起源は、垂仁天皇の時代に行われた當麻蹴速と野見宿禰の力比べといわれている。相撲の開祖、當麻蹴速の塚と伝承する五輪塔が相撲館けはや座の脇にある。徒歩15分。
太子温泉 竹内街道が貫き、万葉ゆかりの歴史探訪の町に湧く。湯の花が岩の湯船につき、いかにも温泉らしい。車で15分。8~21時30分、900円〜、第3水曜休 電話0721-98-4126